はじめに
前作『the 1st』から一年。待望の『the 2nd』がリリースされておよそ二週間が経過した。長いようで短い時間だった。
前作をクリアした(厳密に言えば「あのラストを見た」)人間の大半はthe 2ndを待ち望んでいたことだろう。私もその一人だ。
結末を知っているという強力なデバフを撥ねのけるほどの完成度の高さと、溢れ出る作品愛。細かなトラブル自体はあったものの、品質は近年稀に見る大成功だったと言って良いと思う(the 1stがいかに素晴らしかったかについては私の前作レビュー記事を参照してほしい)。
そしてこの一年で、ファルコムと空の軌跡を取り巻く状況は良い意味で一変した。
成功指標を表すのに、株価ほど雄弁なものはあるまい。日本ファルコムの株価は昨年8月から2倍以上に上昇した。半導体やメモリ不足による逆風が強いゲームセクターにおいて、ここまで強くアウトパフォームした銘柄は決して多くない。
この理由が単なるインフレでないことも、株価チャート1を見ればはっきりとわかる。昨年8月の時点では高値1388円。昨年9月後半のthe 1st発売後、今年2月の好決算で一気にスパイク。その勢いは止まらず、8月の決算ではなんと上場来高値3045円を付けた。9月18日の株価は多少落ち着いたとはいえ、それでも終値2795円である。
株主の想定を超えた業績と高評価が、長年低迷していた(誇張ではない!!)株価を一気に押し上げたといっても過言ではない。特に、海外(元々人気があったアジア圏を除く)ユーザー層を開拓できたのは極めて大きい。
PlayStationのみならずNintendo SwitchやSteamで全世界同時リリースをできるようになったのも、ファルコムの規模・膨大な文章量を持つゲームの性質を考えれば、全く当然のことではない。ファルコムの社員数は2026年時点で74名だ2。
特に、グローバル版パブリッシャーであるGungHoの尽力は特筆に値する。JRPGというニッチ分野にも関わらず、彼らが前作・本作にかけてくれた情熱は大きかった。the 2ndの発売一ヶ月前の今年8月に、前作the 1stで不自然と指摘されていた翻訳・ボイスの修正を含むアップデートを配信したほどだ3。
翻訳文のみならともかく、ボイスの再収録が大変であることは容易に想像できる。恐らく、the 2nd向けの収録と併せてだったのだろうが、それを考えて実行するハードル・コストは決して低くなかったはずだ。
さらに、昨年の株主総会で社長より発表があったとおり、the 2ndでは「ようやく」Steamページが1つに統合された。今まではパブリッシャーが違っていた都合上、日本・グローバル版とアジア版(CLE社)は別々のSteamページを持っており、検索でも後者が引っかかってしまうため混乱を招くことが多々あったのだが4、ようやくこの問題が根本的に解決されたということになる。the 1stの時にあった途中での販売取り下げ等5の混乱もなく、無事にSteamにおける高評価率96%を記録した。まさに大成功だ。
the 2ndの完成度を高めるための並々ならぬ努力に、心からの敬意と感謝を表したい。
さらに、ファンとして嬉しい点がもう一つあった。有名なVTuberや海外のストリーマーによる配信・動画が増え、認知度が高まったのだ。
今まで、ファルコム作品は配信されたとしてもごく一部の層にしか届いていなかった。軌跡シリーズがあまりに長すぎて、全てを追えているのがファルコムを強く信仰するファンだけになってしまっているため、配信の需要自体がかなり小さかったのだ(かつ、肝心の過去作FC/SCはどうしても見栄えが劣る)。そして多数の娯楽で溢れる現在、新作ゲームは配信や動画での認知度獲得がかなり重要になってきているため、それが難しいファルコムゲームはさも化石同然の扱いを受け続けてきたわけである6。
だが、the 1stは文字通り軌跡シリーズの第一作目だ。しかもリメイクはパッと見でルックが良く、高速モードやファストトラベルなどの現代に必要な機能も一通り揃っている。JRPGはペルソナなども人気だし、空の軌跡自体の評価は元々高い。
こうした好条件があったためか、登録者数数十万人級の著名VTuberを皮切りに、いろいろな方が配信でプレイなさっていた。濃いファンばかりの集落になっていた軌跡ファン界隈に、新たな人々を連れてきてくれたことは、素直に喜ばしい。軌跡構文を使うと「ファン冥利に尽きる」ということだ。
さて、前書きが長くなってしまったが、いよいよ本題に入ろう。
一週間かけて無事にクリアしたので(クリアは23日早朝。シルバーウィークで助かった)、感想と評価を述べる。なるべくネタバレは避けるが、原作が出てから20年が経つので、必要な部分については記載する。the 1st と the 2ndをまだクリアしていない方は、以降を読まないことをオススメする。
また、the 2ndはthe 1stとかなりの部分で共通しているので、前作レビュー記事も参照されたい。
また、本記事は人間が数時間以上かけて執筆しており、昨今流行りのChatGPTなどに丸投げした『スパム』7ではない。証拠として、必要最低限の写真も添付することにする(当然、これらはCC0でライセンスされない)8。
公式PV(©Nihon Falcom Corporation)はこちら:
[続きを読む]