7月に日本ファルコムから発売された『亰都ザナドゥ -桜花幻舞-』をプレイし終えたので、簡単に感想を書きます。
なお、個人的な温度感というか、作品に対する熱量があんまり上がらなかったので、軌跡シリーズで書いていたほどの網羅的なレビューはしません。率直に書くので、あしからず。
公式PV(©Nihon Falcom Corporation)はこちら:
一言で言えば
まあまあ面白いけど、あんまり刺さってはいない。良い部分と悪い部分がはっきりしている。
点数にすると70点+αくらい。Steamで高評価78%(8月15日時点)というのがまさにぴったりだと思う。
全体的に省エネな作り
プレイすると分かるが、今回は見るからに省エネな作りだ。
ストーリー進行は基本的に紙芝居で、ノベルゲーチックさが強い。
探索パートも横スクロールで、ギミックとて大したことはない。徐々にアクションが解放されるものの、そんなに大きくは変わらないし、戦闘もだいぶ大味。とはいえボス戦はフル3Dで、結構よかった。
サウンドはいい曲がいくつかあったが(挿入歌の From “i” とか)、BGMで耳に残ったのはあんまりなかったかもしれない。主題歌については後述するが、多用されすぎていて曲の価値を落としてしまっている。
シナリオもシンプルな作りで、小学生でも理解できるくらいには分かりやすい。こいつ敵だなと思ったらやっぱり敵。
また、後ほど述べるが、設定をいろいろ盛っている割に活用しきれていないのが勿体ないなと感じた。おかげで理解しやすいというのもあるが。
と、「コストを落として作ってみた意欲作です!」感がひしひしと伝わってくるのが本作である。
ただ、別にこれ自体悪いわけではなく、むしろ良いことだ。何せ、ファルコムは現状イースと軌跡の二本足打法。軌跡は構造上いつか終わりが見えているシリーズではあるし、次なる人気シリーズを打ち立てる取り組みが形になったのは、素直に嬉しいところだ。
グラフィックは普通に良い
グラフィックについては、横スクロールや紙芝居がメインの都合上見えにくい点もありつつ、見せ場ではしっかり空の軌跡 the 1stと同様の綺麗さがあったと思う。
細かいルック調整くらいの差しかないんじゃないか、とも。よほど目の肥えたプレイヤー以外はこれで満足するだろう。
AAAクラスの綺麗さは大多数に求められていない(そのコストを買い切りで賄えるジャンルでもないだろう)し、アニメ調でそこそこ綺麗・破綻がないというだけで個人的には満足。
ただ、手付けのダバダバ走りアクション、具体的には「走るモーションと移動距離が明らかに釣り合っていないもの」はいい加減なんとかしてほしい。これは軌跡でも未だに見かけるが、間違いなく没入感を損なっている。
アクション・操作性は大味
こんなもんかなと思いつつ、イースや既存ゲームと比べると荒削りだなとも。
アクションについて考えてみると、
横スクロールアクションは最初こそ新鮮なものの、慣れてくるとマッピングの作業感が増してくる。幻素中毒のせいで一気に進められないのも興を削ぐのに一役買っていた。
戦闘は敵の攻撃を弾くいわゆるパリィがかなり強力で、これさえやっておけば大体勝ててしまう。そうしなくても、ソウルアクセルによる体力回復や強攻撃のごり押しで何とかなるので、難しいわけでもない1。そのくせラスボスあたりは露骨に強いので、その温度差に驚いたくらいだ2。
で、戦闘もボス戦はフル3Dに切り替わるのだが、一般ボスは挑む前に雑魚敵のウェーブが何回か発生し、これが面倒だったのがやや不満である。
式霊符も……影と天以外変える必要あったか? 性能差がほとんどないので、主人公以外は全員初期のままスキルだけ適当に差し替えて使っていた。それでも不自由しなかったし、何のためにあるのかほとんど分からず。
操作性についても、
例えばソウルアビリティのマス選択が遅くて面倒だった。どこかを押せば高速移動とかできたんだろうか? Switch 2 のスティックで移動するのがやや苦痛。
また、これはどちらかというとサイクルの問題になるのだが、授業・街中での交流・自宅でのミニイベント回収がとにかく冗長で、面白くなかった。
特に街中での交流ターン。序盤ではいろんなスポットを開拓しなければならないが、訪れる度に演出が流れてイラッとしたし、そもそも交流自体が全く面白くない。
キャラがいるスポットでFPを消費して交流が可能だが、話す内容がチープで深みがない。端的に言って、キャラが生きている感じがしない3。
今作は与えられるFPが多いのでモブキャラとの交流も積極的に進めていたのだが、誰と話しても会話があまりにも定型的すぎて、結局半分以上はスキップボタンで読み飛ばしていた。こんなことはファルコム作品で初めての経験だ。
挿入曲、主題歌はいいけれど……
挿入曲『From “i”』は透明感があってかなり好きだ。が、作中ではそういう使われ方をするのねと、ちょっと驚いた。悪いことではないのだけれども、意表を突かれたというか。ぜひ体感してみてほしい。
問題は主題歌『Outer Sky』。疾走感溢れるテンポとキャッチーなサビで良い曲、良い曲なんだけれども……毎回ソウルアクセルを発動する度に流れるのが本当によろしくない。曲は全く悪くないのに、なんか安っぽいというか、一種の馬鹿馬鹿しさを感じてしまう。
カッコいい曲はここぞと言うときに使うべき。『処刑用BGM』と喜ばれているものは大抵そういう使われ方をしているはずで、安売りしてはいけないのだなと実感した。ちなみに、 v1.04 のアップデートで切り替え機能が実装されたらしい。
その他、BGMは全般的に落ち着いていて良かったが、フィールド中ずっと流れっぱなしだとやはり飽きてしまいがち。
シナリオはぶっちゃけ微妙
で、ここまでいくつか文句を書いてきたが、今作の最大の問題点はここだと思っている。
ネタバレを極力避けた上であえて表現すると、要は劣化版ペルソナ5だ。
何が劣化しているかというと、とにかく「薄っぺらい」の一言に尽きる。
例えばキャラクター。本作ではいろんなキャラが出てくるのだが、誰々は名家のエリートで、誰々は財閥のトップで、誰々は企業連合やら謎の組織やら教会やら……と、みんなそんな調子である。もちろん、我らが主人公はブルジョア出身のイケメンかつ天才で——
……申し訳ないが、一ミリも共感できなかった。
仮に、閃の軌跡のようなファンタジー世界が舞台なのだとしたら「そういうもの」と割り切れただろう。何せ幻想だし、貴族まみれでも違和感がない。
しかし、本作の舞台はあくまで現実世界だ4。そんな中、当然のように登場人物みんなを上級国民にしてしまったら、共感・感情移入が進まない。しかも登場人物数が多いもんだから(公式サイトだけでも三十人以上)、お互いキャラを食い合ってしまっていた。これがもったいない。
参考例として、同じく現実世界を舞台とするペルソナ5の主人公たちを考えてみると、彼らはあくまで非力な一般人だ。社長令嬢や天才ハッカーであっても権力に逆らえないし、主人公に至っては冤罪で保護観察処分を食らった挙げ句、最後の最後で出頭を求められるくらいには弱い立場に置かれている。しかし、そんな彼らも異世界ことパレスでは大活躍で……といったように、現実とファンタジーにおける立場が整理されていることによって、プレイヤーの共感や没入感を高めつつもフィクションとして面白いものに仕上がっているわけだ。
仮にこの境界が曖昧で日常側でも力が振るえていたとしたら、あれほどの緊張感もなく(パレスを攻略しなければ主人公たちの人生は終わってしまうのだ)、イキリ高校生の俺TUEEEE系RPGで終わっていただろう。
そう、緊張感である。いわゆる緩急というものが、キャラを引き立て、シナリオの味を引き出してくれる。
対して京ザナはどうか? 現実世界における主人公やキーキャラたちは名家、財閥、天才の集まりだ。さらに、主人公たちが通っている学園は『ようこそ実力至上主義の教室へ』も真っ青の、荒唐無稽なランキング主義かつ死者も多数というトンデモ学校なのだが、そこでも主人公たちは危なげもなくバリバリ頭角を現す。綾小路のようにグループを巻き込んだ心理戦を展開するわけでもなく5、ただただ、息をするように大活躍をしてくれる。主人公たちは常に最善手を打ち、敵対陣営はそれを呆然と眺めるか、あるいは極端に無能な振る舞いをするだけだ。
そして中盤で明かされる主人公の知られざる過去……も、ブルジョア出身という禁忌カードが切られた時点で察してしまった。ちなみに、主人公はそんなシリアスな回想シーンですら実力で無双している。
今時、なろう系主人公でもこうはならないだろう。人工甘味料でキャラに味付けをしすぎとしか言いようがない。
……と、こんな風にキャラの設定を盛りまくっている割に、交流イベント・譚歌抄は内容がペラペラすぎるのも変なところだ。
選択頻度や回数が多すぎて面倒だし、本筋とほぼ関係がないし、キャラに引き込まれるような話でもない。
ぶっちゃけ「FPが無駄に余ってるし、とりあえず選んでおくか」という消極的なイベントでしかなかった。大して関係性のないモブキャラを選ばせるためにわざとFPを増やしたんじゃないかとも勘ぐってしまう。
FPを多めに配っていろんなイベントを進められるようにしたのは、一時期の閃の軌跡が叩かれてた点への反省と見れば一定理解できるものの、
結果的に面白くない単調なイベントになってしまっているので、要改善と感じた。キャラと世界とのつながりが薄く、広がりが感じられなかったのが原因の一つかもしれない。逆にルルイはそういう点において、触媒として機能していて良いキャラだったと思う。創の軌跡のラピス枠。
そしてキャラと言えば、敵があまりに分かりやすすぎるのも冷めた部分だった。描き方があまりに非現実的かつ一面的すぎて、レッテル貼りも大概である。
面白いのは、それでも敵の言っていることの方が正しいだろと思う場面の方が多かった点だ。「子供を危険な目に遭わせている、この学園は人権侵害ではないか」と指摘するために学園へ乗り込んできたザ・悪役に対し、露骨に圧力をかける主人公たちの勇姿は涙なしで見られない。一体全体、果たしてどちらが悪役なのか。
今作のライターには「設定の引き算」をもっと考えて欲しいと思う。そうすると、過程の描き方も丁寧になってくるはずだ。
「設定」という飛び道具に頼り過ぎた今作の反省が、次回作では活かされていることを祈っている。
総評:「京ザナ」というザナドゥ新シリーズの立ち上がりとしては悪くない
なんだかんだ文句を書いてしまったが、それでもゲームとしてきちんと成立しているし、ラスボス含め終盤の展開など良い点も複数あった。
その分悪いところも目立ってしまっていたが、謎を散りばめつつも続編を意識した終え方ができた点を踏まえて及第点かなと。
売上と今後に期待。ファルコム4Qはいよいよ『空の軌跡 the 2nd』がリリースとなるし、今作と合わせてどこまで積み上げられるかが楽しみだ。
余談
東京ザナドゥの内容を忘れた
プレイしたのがずいぶん前なので、東京ザナドゥの内容をすっかり忘れてしまった。
特別面白いとも思った覚えはなかったが(適当にボタン押してたら勝てるくらいの難易度だった記憶)、フル3Dから横スクロールへの転換は多分正解。フル3Dはイースがあるし、半端なものを出すよりこれくらい振り切った方がよさそうだ。
あと、横スクロールは忙しくてもちょこちょこ進められそうと感じており(偏見)、若干手が出しやすかったかも。それもあって今回は PS5 ではなく Switch 2 で買ってみたというのもあり。
超主観的な意見だが、フル3Dよりは2Dの方が手軽そうに感じるし、似たようなカジュアル層を取り込めていればいいなと思う。
Switch 2 は据え置き機
Switch 2はポータブル感を出してはいるが、これは据え置き機だなと感じた。理由は重いし絶妙に大きいから。
PSPの感覚でプレイできるじゃんと手持ちでしばらく遊んでみたが、腕も腰も痛くなってしまい長続きしないし、寝っ転がってもサイズ的にどうしても違和感・疲れが出る。
おとなしくドックに差し込み、テレビにつないで遊ぶのが吉だ。コントローラーもプロコンの方がいいかもしれない6。
実際、全滅は序盤に1回したきりだった。 ↩︎
ラスボスはちゃんと強かった。ギリギリ一発で勝てたので、いい塩梅だったと思う。これは面白かった。 ↩︎
京都の狭い街中でしか交流できない時点で難しかったのかも……と一瞬考えたが、しかしクロスベルは面白かったよなと脳内で即座に反論された。 ↩︎
首都となった京都というワクワク設定があった割に、どこか寂れた感じが出ていて、設定を活かせていない上にリアリティも感じられなかったが。 ↩︎
一応「こんなことを想定して手を打っておいたぜ」系は何個かあったが、いずれも匂わせから伏線回収までの距離が短すぎて、逆算して作りました感が強すぎるのは惜しいところ。 ↩︎
とか考え始めると、PS5でええやんになってくるのだが……。 ↩︎